日本語版努力−報酬不均衡モデル調査票のページ
内容 【ダウンロード】(IEでは右クリックで「ファイルに保存」を選択ください) ERI日本語マニュア ル2007 (pdf) ERI日本語調査票2005 (pdf) 職場環境等改善のための「努力−報酬不均衡モデル 日本人におけるERI平均得点(MS Word file)
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【日本語版努力−報酬不均衡モデル調査票マニュアル】 <理論><研究の動向><職場での応用><調査票の使用条件><問い合わせ・資料請求先><謝辞>
【理論】 ドイツの社会学者Siegristらによって提唱されている職業性ストレスを評価する理論的モデルであり,集団を対象とした疫学的応用を念頭においている。その第一の特徴は,職業生活における「努力」と「報酬」の二つの軸を基に慢性的なストレス状況を把握することにある(Siegrist, 1996)。 状況特異的な要因として測定される「努力」という構成概念は仕事の要求度,責任,負担を測定する項目から構成される。一方,「報酬」は労働者が仕事から得られるもの,もしくは期待されるものとして経済的な報酬(金銭),心理的な報酬(セルフ・エスティーム)およびキャリアに関する報酬(仕事の安定性や昇進)を測定する項目からなる。近年の厳しい経済事情を反映して,キャリアに関する報酬の重要性が強調されている。本モデルは「職業生活において費やす努力と,そこから得られるべき,もしくは得られることが期待される報酬がつりあわない」高努力/低報酬状態をストレスフルとする。仕事量は多いのに不安定な仕事,昇進の見通しや適当な報酬が与えられることなく高レベルの業績を求められる仕事,一生懸命やっているのに正当に評価されない状況,などが努力−報酬不均衡状態の例として挙げられる。実際の測定には努力項目(6項目)と報酬項目(11項目)からなる質問紙を用い,両項目の得点比に項目数を補正した値が一定以上のグループを曝露群として非曝露群との間で比較される。 第二の特徴は,状況面からのみならず,仕事に過度に傾注する個人の態度や行動パタンを危険な個人要因として測定しようとする点にある。このディメンジョンは「オーバーコミットメント」と呼ばれ,仕事上認められたいという強い願望と関連するとされる。この行動パタンはそれ自体リスク要因と考えられるが,モデル内では努力−報酬不均衡状態を修飾するものとしても位置づけられている。すなわち,他人より先んじたいという競争性や仕事の上で認められたいという欲求のために,必ずしも良好とはいえない就業状況(高努力/低報酬状態)を甘受したり,その認知のゆがみ(要求度に対する過小評価やリソースに対する過大評価)から実際の報酬に見合わない過剰な努力をしたりするとされる。初期の研究では,この個人的要因は「個人に内在する努力」と定義され,「状況特異的な努力(外在的な努力)」とともにモデル内で1つのディメンジョン(努力)を構成していた。その後測定概念の整理が進み,現在では,職業環境を捉えようとする状況特異的な要因としての「努力および報酬」と個人的な要因としての「オーバーコミットメント」は分離して操作化されている。オーバーコミットメントを測定する尺度には29問からなる初期バージョンと,その後のテストで妥当性が確認された6項目からなる短縮バージョンがある。いずれも,その得点分布の上位3分位をリスク群としている。 努力−報酬不均衡モデルは,以下の3点から注目を集めている。まず,先行モデルが捉えていないディメンジョン(報酬)を提示していること。このディメンジョンは,何よりも今日の雇用環境の変容に関連したストレスフルな状況を鋭敏に捉えている。しかもこのモデルには,種々の健康問題に対する高い予測妥当性が認められており,いくつかのストレス関連疾患では他のストレスモデルを凌駕する成績を呈示している。さらに近年,この20年間職業性ストレス研究をリードしてきた仕事の要求度−コントロールモデルとの相補的な関係が実証されるに至り,モデルの応用性の広がりに期待がもたれている。また,社会学的な状況要因と心理学的な個人要因の統合を試みている本モデルは,環境へのアプローチとともに個人へのアプローチをも含めた理論に基づくストレス対策介入の可能性を包含している。
【努力−報酬不均衡モデルを使用した研究の動向】 努力―報酬不均衡モデル調査票を用いた実証研究には,身体的・精神的自覚症状をアウトカムとしたものに12の横断研究,3のコホート研究が,心血管疾患に関しては2の症例‐対照研究,7のコホート研究,身体的な心血管疾患の危険因子に関しては8の横断研究,2のコホート研究,生理学的な指標を用いた3の実験的研究と1のケーススタディ,行動面の危険因子および生活習慣関連の身体的指標については4の横断研究と1の前向き研究がある。健康関連アウトカムに対する努力―報酬不均衡状態の予測妥当性は少数の例外を除き支持されている(堤 2004a; Tsutsumi & Kawakami 2004; van Vegchel et al., 2005)。
複数の前向き研究が,オーバーコミットメントはQOL,精神的不健康,アルコール依存および,心血管疾患罹患を予測することを支持している。これらの研究ではオーバーコミットメントと低報酬や交替勤務などの就業環境を組み合わせた指標が暴露要因として検討されており,その評価には慎重を要するものの,標準化された調査票による研究でもポジティブな所見がネガティブ所見を凌駕している(堤
2004b; Tsutsumi & Kawakami 2004; van Vegchel et al., 2005)。 【努力−報酬不均衡モデルの職場での応用】 ERI調査票のうち,外在的努力・報酬を測定する調査票は,職場環境に起因する職業性ストレス要因を評価するため疫学的研究に使用されることを想定して開発されている。以下の用途がある。 1.職業性ストレス要因が健康に及ぼす影響の調査研究 2.事業所内での職業性ストレス要因の比較 3.ストレスの実態把握(サーベイランス),ストレス対策の評価 現状では研究目的の使用がなされているが,2万人におよぶ本邦の就業者から得た標準値を参考に職場へのフィードバックも行われている(山本 2004)。仕事にのめりこみすぎる行動パタンの修正に関しては,オーバーコミットメント尺度の利用が期待される(堤 2004b)。
【日本語版努力−報酬不均衡モデル調査票の使用条件】 Siegristは,以下の使用条件をもって本調査票を公開している: 1.モデルを使用した論文・報告書等にSiegristらにより使用許可を得たことを記すこと 2.推奨版を使用すること(理論を借りた類似尺度や調査票の部分的な使用を避けること) 3.調査票の心理特性検討のため,求めに応じてデータを提供していただきたいこと 4.使用料は求めていない 平たく申し上げれば,Siegristらのオリジナリティを認めて出典を明記し,推奨版を使用していただければ,特に制限なく利用できます。出典引用にあたっては,資料に付属した参考文献を参照してください。情報は適宜アップデートしていますので必要に応じてご連絡ください。 しかし,モデル自体が発展段階のもので多様なデータを用いた心理特性の確認が今後とも不可欠であるため,調査票の標準化のための協力を要望しています。具体的には,基本属性を含むERI調査票で得られるデータを提供していただくことを依頼していますが,決してユーザーの研究に干渉するものではありません。 このため,Siegristは使用者の登録制を採用しています。日本語版については現時点で堤(岡山大学大学院)が責任を持っており,実際のご使用にあたっては下記まで連絡をお願いします。
【日本語版努力−報酬不均衡モデル調査票についての問い合わせ・資料請求先】
堤 明純 【謝辞】 本マニュアルは,平成12年度〜15年度科学研究費補助金 基盤研究(C)(2)研究課題名「努力‐報酬不均衡モデルによる日本人のための職業性ストレス測定尺度の開発応用」 課題番号12670373( 研究代表者 堤 明純)の成果物です。
尺度開発および改良にあたり多くの先生方から有益なアドバイスをいただきました。また,尺度の標準化のために貴重なデータを提供いただいた先生方より心よりお礼申し上げます。: |
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【日本語版努力−報酬不均衡モデル調査票についての問い合わせ・資料請求先】
堤 明純
産業医科大学 産業医実務研修センター
807-8555 北九州市八幡西区医生ヶ丘1-1
電話093-691-7167 ファックス093-692-4590
e-mail:tsutsumi@med.uoeh-u.ac.jp